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書籍のご案内

学校音楽の「カリキュラム経験」
―潜在的カリキュラムの生成過程  
笹野恵理子 著
A5判・上製・横組・384頁
(本体6,000円+税)
ISBN 978-4-8115-8021-0 C1037
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内容概略
 学校音楽カリキュラムは、「当事者」である学校成員にどう経験されるのか。これが本書を支える根本的な問いである。
 学校において営まれる音楽を通して、人はどのような「経験」を編み、それはその人の個人誌にどう位置づけられ、意味づけられるのか。本書は、教室で「経験」を編む教師と児童生徒らの学校音楽カリキュラムへの意味付与を「学校音楽のカリキュラム経験」と呼んで対象化し、その経験を構成する過程のメカニズムを解明しようとする。
 カリキュラムの社会学的研究に影響を受けた本書の意義は、「カリキュラム経験」という鍵概念で、潜在的カリキュラムと顕在的カリキュラムを切り結ぶことにある。その基本的なスタンスは、カリキュラムをコンテクストから独立可能なスタティックなモノとして見る見方をいったん留保し、さまざまなコンテクストに媒介されて関係性の中から「経験」を創り出す装置として捉える視点にある。
 本書は、従来のスタティックな学校音楽カリキュラム研究に対して、学校音楽を「文化」の観点から捉え直すことで、それを担う人々の多様な関係性の文脈から経験されるカリキュラム観を対置する。それによって、教育過程の「知」の伝達過程を複線的に捉え直し、学校音楽カリキュラムのダイナミックな「生きた姿」を描き出そうとする。結論として「学校音楽文化理論」を論じた本書は、「教科」の「当事者」の経験の意味に迫ろうとした一書である。

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目次

まえがき
序章 問題の設定と本研究の目的
 1. 問題の設定
 2.「カリキュラム経験」研究の必要性と意義
 3. 日本の学校音楽カリキュラム研究に関する先行研究の検討
 4. 本研究の目的と構成
第1章 潜在的カリキュラムと学校音楽の理論的視点
 1. 潜在的カリキュラム研究の立場と方法
 2. 教科教育学研究における潜在的カリキュラム研究の到達点と課題
 3.「カリキュラム経験」研究の実証的研究の視点
第1部 学校音楽における教師の「カリキュラム経験」の実証的検討
第2章 教師の「カリキュラム経験」の内容構造
 1. 分析枠組み
 2. 質問紙調査の概要 
 3. 統計的分析
 4. 教師の「カリキュラム経験」の特質
第3章 教師の「カリキュラム経験」の文脈
 1. 分析枠組み 
 2. 教科授業を意味づける文脈 
 3. 教科外活動を意味づける文脈 
 4. 教師の「カリキュラム経験」の文脈と構造 
第4章 教師の「カリキュラム経験」の「語り」と分析
 1. 分析枠組み 
 2. 教師の「語り」にみる学校音楽カリキュラム 
 3. 教師の「カリキュラムの経験」の構成過程
第2部 学校音楽における児童生徒の「カリキュラム経験」の実証的検討
第5章 児童生徒の「カリキュラム経験」の内容構造
 1. 分析枠組み
 2. 質問紙調査の概要 
 3. 統計的分析
 4. 児童生徒の「カリキュラム経験」の特質
第6章 児童生徒の「カリキュラム経験」の文脈
 1. 分析枠組み
 2. 児童の「カリキュラム経験」を構成する文脈 
 3. 生徒の「カリキュラム経験」を構成する文脈 
第7章 「元」生徒の「カリキュラム経験」の「語り」と分析
 1. 大学生の「語り」を取り上げる意味
 2. 音楽に進路展望をもつ「語り」──「語り」と分析1 
 3. 音楽に進路展望をもたない「語り」──「語り」と分析2
 4. 児童生徒の「学校音楽のカリキュラム経験」の構成過程 
終章 結論
 1. 研究成果の要約 
 2. 結論──学校音楽文化の継承と変容 
 3. 今後の課題と展望
引用・参考文献 
あとがき 
索引

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著者

笹野恵理子 著

笹野恵理子(ささの えりこ)
立命館大学産業社会学部教授

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