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書籍のご案内

虐待された子どもの知能心理学
―学力,性格,トラウマとの関連  
緒方康介著
A5判・上製・160頁
(本体4,000円+税)
ISBN 978-4-8115-7921-4 C1011
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内容概略
 本邦において,子ども虐待は最早目新しい社会問題ではない。児童相談所だけでも,対応件数は今や年間10万件以上に上る。虐待された子どもの多くにさまざまな臨床的問題が生じることは,医療・福祉・教育・心理の専門家間では常識となっている。しかしながら本邦では,虐待された子どもに係る科学的な臨床知見の報告に乏しく,諸外国に比較してエビデンスの蓄積は脆弱と言わざるを得ない。
 本書に掲載された様々な知見は,児童相談所の児童心理司による心理診断を通して,虐待された子どもが抱える臨床的困難を多角的に分析した研究の数々である。特に,知能の問題に焦点化して,学力・性格・トラウマとの関連をも扱った他に類をみることの少ない心理学書である。
 虐待が子どもの知能を低下させることは,既にほとんど確立された知見と言えるが,本書ではさらに深く広くこの知能の問題に取り組んでいる。情緒的な要因が与える影響,家庭分離により回復可能な知能領域,横断的方法による発達的な知能特性の変遷,そして臨床応用を目指した類型化の提案など,前著『被虐待児の知能アセスメント』における基礎的な知見を参照しながらも,新たに応用的な観点から7つの調査知見が示されている。虐待された子どもの支援を担う専門家に向けた実践の参考書であり,かつ,知能心理学と子ども虐待の接点に迫った学術書でもある。

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目次

はじめに
一部 問題の背景と研究の目的─児童相談所の現場から─
Ⅰ章 虐待被害児の不適応と低学力ならびに知能の問題
 1. 虐待被害児の現状
 2. 知能に係る先行研究
 3. 方法論としての知能検査
 4. 本書の目的
 5. Ⅰ章のまとめ
二部 虐待された子どもの知能研究─児童心理司の専門性として─
Ⅱ章 非知的要因と知能の関連
 1. 下位検査プロフィールとPTSD症状
 2. トラウマ反応と知能
 3. 性格と知能
 4. Ⅱ章のまとめ
Ⅲ章 知能回復の可能性
 1. 児童福祉施設入所と回復可能な知能領域
 2. 2種類の知能検査と潜在知能の推定
 3. Ⅲ章のまとめ
Ⅳ章 知能プロフィールの類型化と応用可能性
 1. 学齢別の知能因子構造
 2. 各学齢内での知能プロフィールの下位分類
 3. WISC-IIIとWISC-IVにおける知能プロフィールの相関
 4. Ⅳ章のまとめ
三部 総合議論─虐待された子どもへのより良い支援を目指して─
Ⅴ章 研究知見
 1. 調査研究の総括
 2. 知能研究への理論的貢献
Ⅵ章 臨床的示唆-学力補償へ向けて
 1. 心理診断への適用
 2. 児童福祉実践への応用
 3. Ⅵ章のまとめ
Ⅶ章 今後の展望
 1. 研究の限界
 2. 今後の課題
 3. 結論
 4. Ⅶ章のまとめ
引用文献
副論文
おわりに
謝辞

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著者

緒方康介著

緒方 康介(おがた こうすけ)
堺市児童心理司

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