近代ベトナム高等教育の政策史
A5判・上製・432頁
（本体7,200円＋税）
ISBN 4-8115-6921-0 C1037
内容概略
植民地化や内戦によって絶対的弱者の立場に置かれた国は、いかにして自己の主体性を回復できるのか。それは可能なことなのか。本書は、近代ベトナム100年の歴史において、政治体制の転換が高等教育政策・制度の形成にどのような影響を与えてきたかを検証したものである。フランスによる植民地化、旧北ベトナム独立後の社会主義化、旧南ベトナムにおける軍事独裁、南北統一後の社会主義化、そして1980年代後半から始まった市場経済化など、20世紀のベトナムは様々な政治体制の転換・変化を経験してきた。それぞれの政治体制には特定の外国が大きな影響力を及ぼし、高等教育においても特定国の外国教育モデル（フランス、旧ソビエト連邦、旧アメリカなど）が優勢を誇ってきた。これらの外国教育モデルはベトナムにどのように導入・受容され、これに対してベトナム政府・人々はどのように反応したのだろうか。また、各モデルはどのように競合あるいは共存したのか。現在のベトナム高等教育のルーツはどこにあるのか。そして、大学生100万人時代を迎えた今日、ベトナム高等教育はどこに向かおうとしているのだろうか。
本書では、時間軸を一定にして空間比較を行う「共時比較」と、時間の推移による変容過程を検証する「通時比較」の２つの方法を用いて、これらの課題を縦横に分析する。
本書では、時間軸を一定にして空間比較を行う「共時比較」と、時間の推移による変容過程を検証する「通時比較」の２つの方法を用いて、これらの課題を縦横に分析する。
目次
序章 本論文の主題と分析枠組
１節 本研究の主題と問題意識
２節 高等教育比較の方法論
３節 ベトナム高等教育に関する先行研究
４節 本研究の構成と用語の定義
第１章 仏領時代の植民地高等教育
序節 ベトナム近代教育前史：王朝時代の儒教教育
１節 仏領インドシナの成立と教育
２節 仏領インドシナにおける高等教育
３節 「フランス高等教育モデル」の受容と反応
小括 「フランス高等教育モデル」は何をもたらしたか
第２章 北ベトナムにおける社会主義高等教育
１節 仏領高等教育の解体と再編
２節 社会主義高等教育の発展とその特質
３節 「ソビエト高等教育モデル」の受容と反応
小括 「ソビエト高等教育モデル」は何をもたらしたか
第３章 旧南ベトナム高等教育のジレンマと再編
１節 旧南ベトナムの政治・経済・教育状況
２節 サイゴン政権下の高等教育とその再編
３節 「アメリカ高等教育モデル」の受容と反応
小括 「アメリカ高等教育モデル」は何をもたらしたか
第４章 ドイモイ体制下の高等教育改革
１節 ドイモイによる社会・教育の変容
２節 ドイモイ体制下における高等教育変容
３節 高等教育の「市場化」が意味するもの
小括 「市場化」はベトナム高等教育に何をもたらしたか
終章 ベトナム高等教育における外来モデルの受容と変容
１節 比較考察の結果
２節 ３つの問題提起に対する結論
３節 ベトナム高等教育の方向性
参考文献
ベトナム高等教育史年表
著者
近田政博（ちかだ まさひろ）
名古屋大学高等教育研究センター助教授
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