データマイニングとは、大規模なデータベースから有用なルールやパターンを発見し、新しい知識を発見・学習するプロセスであり、ナレッジマネジメントを支える重要な基礎技術の１つである。
　本書の目的は、データマイニングを技術的、経営的な観点から検討し、実践によってその有効性を検証したデータマイニングのビジネス応用の理論的、実践的フレームワークを提示することである。近年、データマイニングに関する技術的な解説書が見られるようになったが、本書ではビジネスの観点からデータマイニングで利用される技術を概観するだけではなく、データマイニングをビジネスシステムに統合し、持続的な競争優位を創出する組織能力の概念について検討を加える。そしてビジネス応用のためのソリューションとして、オープンソースのデータマイニング・プラットフォームMUSASHIを紹介している。MUSASHIは単なるソフトウェアではなく、コンピュータやシステムに対する考え方を含んだシステムアーキテクチャであり、情報技術の根幹部分に光を当てている。ここでは主にFSPデータ（顧客の購買履歴データ）の解析に焦点を当て、マーケティング領域における企業との共同研究の成果として実際の分析事例も紹介し、実務へのインプリケーションを明らかにしている。
　本書は、経営と技術の両面から最新の情報技術を検討する文理融合型の学際研究であると同時に、データマイニングのビジネス応用に関する理論と実践を本格的に扱った最初の研究書である。