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書籍のご案内

教員文化の日本的特性
―歴史,実践,実態の探究を通じてその変化と今日的課題をさぐる  
久冨善之 編著
A5判・上製・562頁
(本体7,200円+税)
ISBN 4-8115-6431-6 C1037
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内容概略
 教師たちの「教える」という仕事の実際とそこに生まれる教員社会とは、「見果てぬ暗黒大陸」の比喩もあるように、複雑で見えづらい性質を持っている。本書はその世界の実態や機微に迫るため「教員文化」と「(その)日本的特性」というコンセプトを設定している。教員文化は、教師たちの仕事とアイデンティティが直面する共通の困難・課題を何とか乗り切るべく、長年の間に形成・継承・再編してきた独特の行動様式(職業文化)である。
 その日本的特性としては「生真面目さ」「献身的教師像」等が指摘されて来たが、Ⅰ部の教師アンケート分析は80・90年代と比較して今の教師たちに「私事化意識拡大」「バーンアウト減少」等の新たな変動が見られることを指摘し、教職倫理を含む教員文化の新動向を解明している。Ⅱ部は戦後の代表的実践家3人のライフヒストリーを追跡し、教育実践の志向・力量の形成・発展・再編がいかに教員文化的要素・様相と絡み合い、時代とともに展開するかを探究した。また「教え子」という言葉に象徴される教師=生徒関係のとり方、学級のつくり方があるが、Ⅲ部では20世紀初頭(学校制度確立期)の一教師の日記分析から「教え子主義」の原型形成の姿を追究している。
 「教育困難と改革」の現代に教員社会・文化の変動の意味を浮かび上がらせる一冊である。

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目次

  序 「教員文化の日本的特性」とその研究をめぐる課題論
1.「教員文化の日本的特性」の今日的課題論/2.教員の実践と教員文化の概念
[特別論文] 資・史料としての私家文書
 Ⅰ部 教育文化の現在――その実態調査から――
1.教員文化実態調査の課題と方法,およびⅠ部の概要/2.教師の学校把握状況と教職アイデンティティ
3.教師のバーンアウト状況の変化にみる教員文化/4.教師たちがつくり出す学校職場――学校別集積データの分析を通じて/5.教員文化を掴むために――教員本調査データの分析から/6.学校におけるカウンセラー導入の実態――教員文化との関係をめぐって/7.Ⅰ部のまとめ,および今後の教員文化研究の課題について
 Ⅱ部 戦後日本の教育実践と教員文化――3人の教育実践家のライフヒストリー分析を通して
1.研究の目的・方法・対象/2.鈴木正氣のライフヒストリー/3.山本典人のライフヒストリー/4.若狭蔵之助のライフヒストリー/5.教師たちの軌跡
 Ⅲ部 教員文化の形成――鈴木利貞日記を読む
1.教員文化の形成と教育愛/2.鈴木利貞の家族環境/3.教員イメージの原型――利貞の就学体験/4.修養観の展開――利貞の自己形成と幼年会実践/5.鈴木利貞と小学校教員社会/6.子ども観の展開とその位相/7.教育関係の形成と教育実践の展開/8.20世紀初頭の教員文化形成の一断面――利貞の事例に即して
 結び――「教員文化と教育実践」の社会学を考える

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著者

久冨善之 編著

久冨善之(くどみ よしゆき)
一橋大学社会学部教授

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