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アドバンス・ディレクティブ:終末期医療の事前指示
  
浅井正行著
A5判・上製・横組・130頁
(本体3,000円+税)
ISBN 978-4-8115-7801-9 C1037
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内容概略
 日本では、延命治療拒否に関する正確な情報不足、「尊厳死」を「安楽死」と捉えるといった誤った認識、緩和治療の本来の目的の周知不足などにより、末期病患者の尊厳を守るためのリビングウィルが未だに認知されていない状況が続いている。リビングウィルは残りごくわずかな命を人間らしく自然に全うしたいと願う、患者の大切な意思表明の手段である。この患者の人権を守るべき書類を作成するという行為が、正しい啓発活動の欠如により国民から支持を得られないまま、尊厳死に関する有識者たちの議論が結論を見ない現状は、打破する必要があるであろう。
  アメリカでは、1976年のクインラン判決で、生命維持装置拒否の権利が認められて以降、さまざまな合憲判決や法律の制定によって患者の自己決定が広く認められてきた。本著では、こうしたアメリカにおける約40年にわたる延命治療拒否の歴史的な流れを検証した。これは、日本における今後の終末期医療のあるべき姿を決定する上で大いに参考になるであろう。
  本書では、カリフォルニア州のリビングウィル(アドバンス・ディレクティブ)の書式を日本語に翻訳すると共に、アメリカ法曹協会発行の「ヘルスケア事前計画のためのツールキット」を日本語に訳して掲載した。また、今後クローズアップされるであろう「心肺蘇生拒否書(DNR)」も掲載した。この拒否書は、心拍や呼吸が停止した場合には、救急隊等による呼吸や心機能を再起動させるための医学的処置の実施を望まない、ということを表明するためのものである。本著では、カリフォルニア救急医療サービス(EMS)がカリフォルニア医学学会と共同作成した拒否書を日本語に訳して掲載している。これらの本邦初日本語完全訳の資料は、「終末期における自己決定」を考える人たちへの指針として大いに役立つことであろう。

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目次

序文 
 第1章 延命治療拒否を宣言するリビングウィルとヘルスケア代理委任状 
  1.リビングウィル 
  2.ヘルスケア代理委任状 
 第2章 「医療行為の(ヘルスケア)事前指示書」の書き方 
  1.医療行為の事前指示書の原文翻訳 
 第3章 アメリカにおいて延命治療拒否にいたった過程:歴史的判決の検証
  1.シュレンドルフ事件 
  2.カレン・クインラン事件 
  3.ナンシー・クルーザン事件 
  4.テリー・シャイボ事件 
 第4章 延命治療拒否の権利を定めた法律 
  1.自然死法(カリフォルニア州)1976年
  2.医師への指示書の英語原文
  3.自然死法(カリフォルニア州)、1991年
  4.1991年版リビングウィルの英語原文
  5.自然死法(カリフォルニア州)、1999年 
  6.統一末期病患者権利法、1985年、1989年
  7.1989年版統一末期病患者権利法のリビングウィルと代理委任状の英語原文 
  8.患者個人決定法、1991年 
  9.統一ヘルスケア決定法(カリフォルニア州)、2000年
 第5章 「医療行為の事前指示書」を書くにあたっての心得:事前計画のためのツール・キット
 第6章 救急時における延命治療拒否を宣言する心肺蘇生拒否書(DNR)
  1.心肺蘇生拒否書の原文日本語訳 
 第7章 終末期医療のあり方:達成感を抱きながら迎える死 
  1.タブー視されてきた「死」 
  2.「人間らしさ」を奪ってしまった延命治療
  3.延命治療への批判 
  4.告知の大切さ:有終の美を飾る末期病患者 
  5.「死の教育」の大切さ 
  6.尊厳死vs.安楽死:相反する死の捉え方
  7.自己決定を尊重するホスピス 
  8.ホスピスのあり方:求められる緩和治療 
 引用文献 

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著者

浅井正行著

浅井正行(あさい まさゆき)
明星大学人文学部准教授

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